2009年9月27日日曜日

屋内の空気を汚染しない新ストーブ導入を決める要素とは


Joygun Nessa, a lady farmer from Bangladesh, cooking "muri" (puffed rice). Part of the image collection of the International Rice Research Institute. (CC)

BOP市場で事業展開を考える企業にも興味深い研究結果が出ている。

伝統的なかまど(上図)に動物の糞やワラ、小枝をくべて煮炊きを行う人口は世界30億人に上るという(国連調べ)。その際、料理をする人(現実には圧倒的に女性)がススを吸い込んだり、室内にもススが蔓延し、呼吸器疾患を引き起こす。かまどに煙突を付けるという単純な技術さえ採用すれば容易に解決するのだが、そうした「クリーンなかまど」はなかなか普及が進まない。なぜか。

スタンフォード大の環境研究所(Woods Institute for the Environemnt)のチームが、屋内空気汚染を起こさない煙突付きのストーブ(煮炊き用のかまど)がどのような条件であれば各戸に導入されていくのか、バングラデシュ農村部で大規模な実証実験を行っている。

チームはBRACと全面協力し、60村の3000戸を対象に様々な条件を変えながら実証を行った。その結果わかったことは下記の通り(詳細は記事原文を参照されたし)。

1)価格は非常に重要(安いほどよい)
2)「買いたい」の比率と、「実際に買う」の比率には大きな隔たりがある
3)かまどに余分に出費するのであれば、「燃焼効率がよく、少ない燃料で早く煮炊きできるもの」よりも、「料理する女性の健康を守るもの」にお金を使いたい
4)「クリーンなかまど」を無料で提供しても、導入家庭は70%に届かない(価格以外の要素が導入に重要な影響を与えている)
5)コミュニティのリーダー(有力者)が拒絶する技術はやはり村人からも拒絶される。
6)コミュニティのリーダー(有力者)が実際に選択して使用している技術は村人には採用されにくい(高価な新技術は教育を受け、富裕なリーダーにふさわしいもので、そんなものは一般民が使うものではない、という意識の存在)
7)導入可否の意思について、男女に大きな差はない。(だが、現実の家庭の多くでは夫が出費の意思決定を行うので、妻が盲目的にそれに従っている可能性が否定できない)

さらなる調査項目:
8)コミュニティリーダー以外の社会ネットワークの影響(例:家族、友人、隣人)
9)時間制約
10)使い勝手の良さ(扱いやすさ)
11)料理の味への影響


<コメント>
上記の要因で、5)と6)の関係がきわめて微妙に絡み合っている点が、大変重要に感じられる。コミュニティ内の伝統的序列を逸脱しない範囲でしか新技術は導入されないのだ。この辺りは、新たな製品を伝統的な農村部へ導入していく際、十分に留意されるべきであろう。


0 件のコメント:

コメントを投稿