2009年12月16日水曜日

「リバースイノベーション」と「適正技術」

先進国多国籍企業によるこれまでの製品・技術開発の思想は、富裕な先進国市場を念頭に、可能な限り技術の高度化を推し進め、付加価値を高め、より高い収益性を追求するアプローチであり、新興国市場へ進出する際も、ターゲットは新興国富裕層市場へ既存の高機能品を最小限の修正で販売するものであった。

リバースイノベーションは、GEの事例が有名だが、一人当たり購買力が相対的に低い新興国を念頭に、ゼロベースで機能本位、実用本位、虚飾を排した製品づくりをし、それを世界市場(含む先進国市場)へ展開する、という考え方である。

関連する概念には「適正技術 appropriate technology」という考え方がある。いわば新興国における「適正技術」をベースに製品づくりをし、それを世界市場へ展開するのがreverse innovationとも言えるだろう。

こうしたイシューから想起されるのが、クリステンセンの言う「持続的イノベーション」と「破壊的イノベーション」の対比である。既存多国籍企業の先進国富裕層を念頭に置いた技術革新が前者であり、適正技術ベースで無駄を省き、機能本位で実用性・コストパフォーマンスが極めて高い製品が後者となろう。

パナソニックをはじめ、現在の日本企業の主な取り組みは、BOPよりも一階層上の「ボリュームゾーン」における適正技術の発見とそれを基にした製品開発である。

一方、BOPをベースに適正技術を考えると、「非電化」も一つの切り口になる。現在は太陽光ベースの製品開発が盛んで、これはこれで素晴らしいが、電気以外の自然エネルギーを使う、というアプローチも当然あるだろう。技術革新の機会は広大に存在すると思われる。

(BOPを舞台にしたリバースイノベーションを専門に研究されている三井業際研究所山口啓一郎氏とのやり取りから感じたことをエントリーしたもの。)

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