2012年5月22日火曜日

神戸大三品教授のメッセージ

5月16日の日経朝刊32面(広告企画「選択の時代」)に、神戸大三品教授(専門:経営戦略)のメッセージが出ている。共感を覚えるので部分的に要約・加筆しておく。(⇒部分は岡田記)


■経営者個人の力量がものを言う時代
「社員に委員会を作らせて、事業展開の方向を考えさせる経営者がいるが、そういう経営者は降りたほうがいい。自分自身の責任でこれで勝負するのだという決断ができる経営者でないと務まらない。」
「情報を収集すること自体は重要ではない。情報収集主義からは脱却すべき。時代の節目では、過去の時代の節目に何が起きたのか、繁栄と衰退の分かれ目が何だったのかという大局的な時の流れを理解する目が重要である。」


■新興国におけるポジショニング
「こうした時代に必要なのは、既存事業へのこだわりを捨てるということ。中国などの新興国でも作れるもの、先方に賃金水準などから比較優位があるものにはこだわらないこと。」
「伸び盛りの新興国企業にも不得手なところが残っている。そこにポジションを見つけてすみ分ける必要がある。」
「新興国で出現しつつある中流階級向けの製品、ボリュームゾーンの製品については、日本の優位性はなくなっている。事業分野を絞り込み、その代わり、この分野では世界を制するというような戦略的意図が重要である。」
⇒新興国ボリュームゾーンは製品分野によってはすでにレッドオーシャン化している

■自社独自の経営資源・ドミナントロジックの重要性
「重要なのは『捨てる』という選択。現在一般には環境・エネルギー、医療・福祉が有望と言われているから、その分野に進出しよう、という意思決定の発想は誤り。これらの分野はどの国のどの企業も有望と考えている。」
⇒rent seeking behavior

「マクロの次元で事業選択するのではなく、自分たちのフィールドで、世界に伍してやっていける技術・市場は何なのかを考えること。」
⇒外部環境でなくコアコンピタンス、ドミナントロジックで。「世界」は「地球規模の市場」と捉えたい。

⇒仕事柄多くの経営幹部と包括的市場に関して議論する機会が増えたが、特にがっかりするのは一般的印象で「BOP市場はまだ早い」などと評論し、事業対象としての検討をはなから退けてしまう人がいることだ。包括的ビジネスへコミットするか否かはあくまで自社の経営理念や経営資源、ドミナントロジックとの兼ね合いで決まるものであり、個別企業の選択の問題である。包括的市場への関与が喫緊の課題ではない企業もあるだろうし、今こそ最大のエネルギーを割くべき企業もあるだろう。新興国市場と同時並行で進め、時間差アプローチを画策するべき企業もあるだろう。


0 件のコメント:

コメントを投稿